悲しみのゲムール

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スティーブン・キング『ドクタースリープ』レビュー/前編

2019年7月6日

 

今回紹介するのはスティーブンキングが2013年に発表したシャイニングの続編小説である『ドクタースリープ』
2015年に邦訳版が文春文庫より発売されている。この作品の映画化が2019年の冬に公開される予定となっている。

本編のレビューの前にまずは前作『シャイニング』について。
前作である『シャイニング』は1977年にスティーブン・キングによって発表され、1980年に監督スタンリー・キューブリックにより主演ジャック・ニコルソンで映画化された。

内容紹介
世界でもっとも恐ろしいホラー小説。その称号にふさわしい作品が、『シャイニング』。予知能力を持つ5歳の少年と両親に降りかかる怪異。ホテルの浴槽に、廊下に、鏡に、忌まわしいものが潜む。怪音がどおんどおんと轟き、青い炎がREDRUMのかたちに燃え、ぶるるるる・がちゃんとエレベーターが動き出し、パーティーの始まりを死人が告げ、惨劇の幕が開く。

内容(「BOOK」データベースより)
“景観荘”ホテルはコロラド山中にあり、美しいたたずまいをもつリゾート・ホテル。だが冬季には零下25度の酷寒と積雪に閉ざされ、外界から完全に隔離される。そのホテルに作家とその妻、5歳の息子が一冬の管理人として住み込んだ。S・キューブリックによる映画化作品でも有名な「幽霊屋敷」ものの金字塔が、いま幕を開ける。

amazonより引用

 

この映画の演出、内容については、原作者のスティーブン・キングはかなり納得が行かなかったらしく、批判を繰り返すとともに後に自身で演出し、1997年にテレビドラマとして制作された。

では、原作者スティーブン・キングが気に入らなかった点は一体どういった所なのだろうか。
これは本人では無いので、正解は分からないが、おそらく作中で描写されるシャイニング【かがやき】と称される部分の扱いの違いでは無いだろうか。

原作であるシャイニングでは【かがやき】はテレパシーや超能力的なものとして、比較的素直にオカルト寄りの扱われ方をされており、それは続編であるドクタースリープでも変わらない。(作中ではもう少し様々な能力として扱われるようになっている。)

しかし、キューブリックの映画ではあまり【かがやき】はオカルト的には扱われておらず、心理的なものとして描写されている。
作中のダニーの【声】に関しても、幼少期のイマジナリーフレンドとも取れるし、夫の幻覚、幻聴にしてもアルコール依存症の禁断症状とも取れる。
また妻のウェンディの方も極度のストレスから引き起こされた結果として扱う事も出来る。

シャイニング333

映画版『シャイニング』の秀逸な所はそういった事を説明せず、映像として徹底的に表現した事ではないだろうか。
そこはキューブリックの偏執的とも言える映像へのこだわりが為せるものだと思う。

恐らくではあるが、キューブリックは人の持つ狂気そのものを描写しようと試みたのではないだろうか。その一人の持つ狂気が、密室という限定的な状況で周囲に伝播していく。次第に現実と非現実、日常と非日常の境界が曖昧になっていく。妄想と狂気。キューブリックの方はサイコスリラーの手法で描かれている。

一方キングの方は繰り返すカルマ(業)や因縁といった内容に踏み込んで行き、それぞれの悩みや葛藤、その答えが一つの場所(景観荘、オーバールックホテル)に引き寄せられていくような話の展開になっている。
それぞれが一つの結論に向かって収束して行き、エンディングを迎えるという内容。そして続編では舞台となったオーバールックが時を経て、再びダニーの前にというお話。

前段階の説明はここまでとし、次回はドクタースリープ本編のレビューをば。

作品、監督、作家、それぞれへの思い入れが深い程、それぞれの解釈は許せないかもしれないが、映画、小説ともに才能ある人の描き方というものを受け手である私達としては、素直に楽しむ事が出来ればいいなと思う。
では、年末の映画公開を楽しみに久方ぶりにオーバールックホテルを訪ねてみるとするかな。
後編へ続く

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