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酉島伝法『皆勤の徒』レビュー

2019年6月16日

 

今日紹介する本は、酉島伝法『皆勤の徒』

 

そうだ。お前の名前はグョヴレウウンンだ。

君は一体、何回目の君なんだい?

 

 

 

第2回創元SF短編賞受賞の表題作にはじまる全4編のもの。

 

▼まずは作者である酉島伝法とは?

 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
酉島伝法
1970年大阪府生まれ。大阪美術専門学校芸術研究科卒。フリーランスのデザイナー兼イラストレーター。2011年、「皆勤の徒」で第2回創元SF短編賞を受賞。
受賞第1作「洞の街」は第44回星雲賞日本短編部門の参考候補作となる。13年刊行の第1作品集『皆勤の徒』は『SFが読みたい!2014年版』の国内篇で第1位となり、さらに第34回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

amazonより引用

 

 

▼あらすじ

 

?―高さ100メートルの巨大な鉄柱が支える小さな甲板の上に、“会社”は建っていた。雇用主である社長は“人間”と呼ばれる不定形の大型生物だ。甲板上とそれを取り巻く泥土の海だけが語り手の世界であり、日々の勤めは平穏ではない―

amazonより引用

 

 

 

▼剥き出しの感性と緻密に練られた設定

 

内容は遠未来のSFで、物語を構成している一つ一つのSF的要素は理解できるものだが、それら一つずつのSF的要素が作者の感性を通して、
うまく融合し、独特の世界を作り出す事に成功している。又、描き出されるその世界はどこか人間臭くて、少し可笑しくて、少し悲しい。

 

登場人物の造形も風景描写もブッ飛んでおり、最初はとにかく圧倒的なイマジネーションの渦に只々戸惑うばかり。
造語も「玉匣(たまくしげ)、隷重類(れいちょうるい)、巳針(みしん)」といった風にこれでもかと登場する。この辺りで目眩とともに、読み進める心が折れそうになる。

 

それでも我慢し、読み進めると、次第に映像が浮かんでくる。そこからはしめたもの。
トリップしながら、一気にクライマックスまで読み進める事が出来る筈。
読了後には、この世界と者(物)に愛着さえ覚えるのだから、不思議なものだ。

 

しかし、この本、本当にとっつきにくい。
私は途中で巻末の解説を読んだ。そこには四章の百々似隊商から読むと、分かりやすいとのアドバイスが。
なので、もしこの書評を読んで、手に取ろうという奇特な方が居るのであるならば、私もそうアドバイスする。
本の読み方を薦めるなぞ、言語道断ではあるが。

 

何故なら、不親切の一言で片づけるにはあまりにもったいないからだ。
これを読んで、人の持つ想像力というものの素晴らしさを是非感じて見て欲しい。
ちなみに不親切というのは、出版側も感じているようで、電子書籍限定ではあるが、設定集も出ている。
もし理解を深めたいという同志がいるのならば、こちらも。

 

サガノヘルマー、うすね正敏、砂ぼうず、EATER、ギーガー、ドロヘドロ。この辺りの単語にピンとくる人なら、お薦め。

 

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